12月13日、京都文化博物館で「座頭市 血煙り街道」上映後、「るろうに剣心」シリーズのアクション監督の谷垣健治さんによるミニトークが行われました。
聞き手は、東映の高橋剣さんです。

谷垣さん:87分っていい尺ですよね。質感もいい。時代を経ても輝きを失わない。むしろ今見 るから、更に良さがわかる。
今だったら、あの速さ、距離感で殺陣をやるんだったら、刀の長さ半分にして CGにしましょうってなるかもしれない。凄いです。

三隅監督は、もっと評価されても良いはずですよね。
海外で三隅フリークというのはたくさんいまして、知り合いの俳優、ジェフリー・ファルコンが自分で初監督をするときに「三隅監督はフジカラーを使うから、俺も使う」なんて言ってま した。
クリストフ・ガンズ監督も同じで、三隅監督ファンでフジカラーなんですよ。

キャストを探す時の話です。
勝プロの常務の真田正典さんが、東映に近衛十四郎さんを訪ねて行ったら、「素浪人 月影兵庫」のセットがベニヤかっていうくらい粗末だったそうで。
その時、真田さんは「近衛さんは座頭市のオファーを受けるだろう」と、思ったそうです。
東映さんには申し訳ないんですが(笑)、大映のセットはしっかりしてますもんね。

アクションって、縦のラインで撮るか、横のラインで撮るか、なんですよね。まあ、上下ってのもありますけど。
縦のラインは空間の制限があるぶん、名作が多い気がします。
香港映画の「ワンス・アポン・ア・タイム 英雄少林拳 武館激闘」とかね、路地裏の戦いなんですが、次第に道幅が狭くなってくる中での戦い方の変化とかあって面白いんですよ。

アクションで一番困るのは、何にも無い荒野で撮ることです。
「座頭市」だと斬ってすぐ、背中を壁につけて、敵が180度の範囲にしか居ないという 状況を作りますが、
荒野だとそれができません。
立ち回り以外の他の要素に行きにくいというかね。東京ドームの真ん中で二人が戦うよりは制限のある民家でやった方が面白くなりそうじゃないですか(笑)? そういうことだと思います。

「るろうに剣心」でも、勝新太郎さんの作品は凄く参考にしました。この映画に限らず。
立ち回りの完璧さとか綺麗さを求めなくて、本当に戦ってる感じがして。

ジャッキー・チェンとかジェット・リーとかは、完全に息の合った伝統芸です。
「座頭市」が香港でウケたというのは、そういう伝統芸とは違った、「間」のある殺陣、もっと言えば「敢えて呼吸を合わせない殺陣」が 新鮮だったのだろうと思います。
ブルース・リーも、「座頭市」の影響を受けているといいます。
「ドラゴン怒りの鉄拳」に出てた勝村淳さんは勝プロの人ですからね。今日の「血煙り街道」にも出ておられましたが。



ブルース・リーが何で香港で受けたかというと、立ち回りが短かかったからです。
京劇みたいな長い立ち回りじゃなく、「ホァ!」と一瞬で片がつく。それがすごくリアルに見えて新鮮だったんじゃないですかね。

「SPL/狼よ静かに死ね」という映画で、路地でスティックとナイフで戦うシーンを 撮った時も、参考にしました。
「立ち回りに見えない立ち回り」をつくるという意味で。

自然に撮りたいとは言っても、俳優に「好きに戦って」と指示しても泥臭くなるだけで絵にならないです。
だから動きは決めるけど、「決められた動きをなぞってる」という風には見せない。
「座頭市」はそういうところが凄い。

ラスト、勝負がつくまで3カットくらいですよね。
市と交差して、その後、近衛さんが奥から来て、おっかけてきてまた交差して。
名勝負なんだけど、1、2分で片がつく。
僕がやったら、300カットくらい撮ると思う(笑)。
3カットで撮るっていうのは、自信があるんですよ。

このシーンで新鮮だったのは二人が至近距離ですれ違ったら、すかさず刀持ってない方の手の掴み合いに変わるところですね。
それを避けつつ相手を攻撃しようとすると、近衛さんの刀が長いから、逆手の勝さんより遅い。だから一瞬でそれを悟って背中で刀を受ける。
感覚的には「背中で受けてカッコイイね」という風に見えるんだけど、その理由を考えるとさらにワクワクさせられます。

「るろうに剣心」の外印は、逆手だから、剣心の中に中に入ろうとする。
剣心は両手で刀を持ってるから、どんどん遠ざけようとするんだけど、外印はまとわりつ いてくる。
剣心も怒って、途中で逆手に持ち変える。
逆手と順手の使い方って、面白いんですよ。

福山さん演じる比古清十郎が、剣心の腕を絡めてコントロールしながら戦うんです。
その後、剣心が比古にやられた技を、宗次郎にやるんですよ。
技を受け継いでる感じが、出るといいかなと。
やっぱり刀合わせるだけだと飽きるんです。僕はすごく飽き性なんで(笑)。



刀をパンと合わせて、すれ違った後、どうするんだということを、考えてます。
刀を合わせたとき、足はガラ空きですから、崩しようがあるなとか。

近衛さんは「座頭市」の撮影中、朝「今日も勝のやつをいじめてくる」と息子の松方弘樹さんに言ってから家を出たそうです。
現場では殺陣師もいましたが、二人で打合せして動きを決める部分もあったようです。

勝さんは「本当に斬りに行ってる感じ」が上手いんです。
スマートにスっとやるんじゃなくて、全身を使ってぶつかるように斬るイメージで。
ビートたけしさんが「逆手はフォークボールを投げる感じ」って言ってましたけど、まさにそんな感じ。

お客さんは頭がいいので、本当に死んでない、斬られてないというのは分かりますよね。
それで、僕らがどこで頑張るかと言えば、一瞬でも「痛そう」と思わせること。

ビートたけしさんが言うところの「バサっと斬るんじゃなくて、うっ…ぐ!って溜めて、肉の挟まるような感じを出す」ということです。

「座頭市千両首」も映画祭の上映候補に挙げてました。壮大な兄弟喧嘩(笑)。
面白いんですよ。DVDも出てるんですよね。

「子連れ狼」も今見ると良いですよね。時代劇のセオリーにはまってなくて。
忍者がスキーで出てきたり。
側宙も、JACの人がやるような綺麗なのじゃなくて、運動神経だけで強引にやってる感じで。
そういうのが心に響くんです。

「龍の忍者」のオープニングは、浜辺から忍者が大勢飛び出してきて、駆けていくというものなんですが、
「子連れ狼 三途の川の乳母車」でも同じシーンがあります。
こっちが元ネタなんですね。

僕は、キートンより先にジャッキーを観て、「三途の川の乳母車」よりも先に「龍の忍者」を観てます。
影響を受けた作品→元ネタの順ですね。
それで今、日本に来てへんてこな時代劇を作ってるわけです(笑)

山崎貴監督とは「鬼武者」のオープニングムービーの時にご一緒でしてるんですが、
「刀って想像以上に、キャラを表現できるんだね」って言ってました。

残酷に見せようと思ったら、足の筋を斬ったりすれば、そう見えます。
逆手か順手かで、距離感が変わりますし。
「座頭市」は逆手だから動きが速い。回転が小さいから。