12月14日、京都みなみ会館で『ベル-ある伯爵令嬢の恋-』上映後、翻訳者・堀越ゆきさんによるトークショーが行われました。

堀越さん:この映画は、実在した女性、ダイド・エリザベス・ベルの物語として制作されていますが、調べてみると、映画としての設定と事実 は多少異なる部分がありました。
映画では、イギリスで生まれた設定ですが、実際は植民地で生まれていたり、20歳くらいでのイギリス人との結婚も、実際はもっと遅くにフランス人と結婚しているようです。

ベル本人の書いた資料は残っておらず、周囲の人の手紙や家計簿から、監督が人物像をふくらませて、映画は作られました。

この映画は、アメリカでは当初4館公開からスタートし、最大525館にまで拡大しました。
アメリカでは他にも近年、アカデミー作品賞を受賞した『それでも夜は明ける』、スティーヴン・スピルバーグ監督の『リンカーン』や、クエンティン・タランティーノ監督の『ジャンゴ 繋がれざる者』など、黒人について描かれた映画が公開され、評価されています。

作品の歴史背景についていうと、当時の奴隷は、一人300万円ほどで売買され、一生無給で働かされます。奴隷の売買は、非常に儲かる商売だったのです。
映画の中で出てくるゾング号の事件についても、現代だったら船から黒人奴隷150人を投げ捨てたら虐殺ですが、当時は「物なので、保険会社が補償するべき」という考えでした。

そうした非人道的な事件に触れ、ベルは変わっていきます。
お金持ちと結婚することもできたわけですが、そうはせず、奴隷貿易をやめさせる方向へ動き出します。
こうしたベルの行動が、大叔父による歴史的な判決に影響を与えました。



私は翻訳者ですが、本業は金融関係の会社員です。
「ある奴隷少女に起こった出来事」という、150年前に黒人奴隷女性によってペンネームで書かれた本を翻訳をしています。

この本は長い間、白人が書いたフィクションと思われていましたが、最近の研究によって、著者が実在することが分かったのです。
現在では、版権は切れているので、原書は無料で読めるようになっています。

黒人少女の奴隷は、白人の主人から強姦され、子供が生まれると、主人によって売り飛ばされることが多かったのです。しかし、著者は勇気を持って、困難に立ち向かいました。

一方、映画では、ベルの又従姉妹のエリザベスは、白人ですが、お金がなく、結婚するしか生計を立てる道がありません。
でも、恋愛したいと思っています。

ベルのように、親や友人に祝福される相手と結婚せず、好きな人を選ぶというのは勇気のいることです。
現代の女性でも、共感する部分があるのではないでしょうか。



この映画の主人公・ベルや、「ある奴隷少女に起こった出来事」の主人公・ハリエットの生き方に、ある聖書の一節が浮かんだのでそれをお伝えします。

「なぜなら、患難は忍耐を生み出し、忍耐は練達を生み出し、練達は希望を生み出すことを知っているからである。そして希望は、失望に終わることはない。」

私は最初、希望を持っていれば、叶えられるという認識をしていましたが、そうではありません。壮絶な長い苦労の人生の中で、それでも希望を持ち続けていれば、それが失望に終わることはないということです。それを彼女たちの人生から学びました。