11月1日(日)、京都文化博物館において、第7回京都ヒストリカ国際映画祭ヒストリカ・ワールド『千年医師物語~ペルシアの彼方へ~』が日本初上映されました。

11世紀、医学を学ぼうとイングランドからペルシアのイスファハンへ旅立った青年の壮大な冒険物語。ヨーロッパを中心に、世界中でベストセラーを記録したノア・ゴードンの小説『千年医師物語』の第1部を映像化したものです。

監督は日本でも『アイガー北壁』や『ゲーテの恋~君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」~』が公開されているフィリップ・シュテルツル。撮影は『善き人のためのソナタ』や『ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋』を手がけたハーゲン・ボグダンスキーで、モロッコロケを敢行した壮大な映像美を、これでもかこれでもかと魅せてくれるスペクタクルなドイツ映画です。しかし全編英語となっており、上映後解説で登場したミルクマン斉藤さんがおっしゃる通り、世界マーケットを意識し力の入った、ハリウッド映画ばりのエンターテインメント作品であります。

ちょっと佐藤健くんを思わせる、可愛さと精悍さを併せ持つフレッシュなトム・ペインが初主演。偉大な医師であり、哲学者で政治にさえ関わったという実在の人物、イブン・シーナ…アヴィセンナの名でも知られる偉人はベン・キングズレーがはまり役。『ガンジー』の成功以降もコンスタントにさまざまな作品で存在感を誇り、今回もロブが憧れてやまない師を大仰ではなくごく自然に演じています。成長期のロブを支える胡散臭い理髪師は、ラース・フォン・トリアー監督作品でおなじみのステラン・スカルスガルド。彼も名優ですがボロ着が妙にお似合いで、人間くさい優しさを作品に与えています。傲慢で誇り高く、孤独なペルシア王はオリビエ・マルティネス。国際的なキャスティングで荘重な作品に仕上がっています。

最愛の母を病に奪われ、旅回りの理髪師のもとに身を寄せた少年ロブ。成長した彼は、見えなくなった理髪師の目を治療した医師から、ペルシアのイスファハンで医学を教える世界最高の医師イブン・シーナの存在を知らされます。高まる医学への情熱に、ついに彼は東方への旅を決意。しかし回教徒の世界に乗り込むためには、信仰するキリスト教徒であることを隠し、イスラム圏では比較的寛容に扱われたユダヤ教徒になりすます必要がありました。海を渡り砂漠を何カ月もかけた過酷な旅を経て、ロブは王が君臨する美しい都、ペルシアのイスファハンに到着。ついにイブン・シーナの弟子入りを果たします。しかし、セルジュークの侵攻によりペルシアは危機を迎えていました。報復のために送り込まれた黒死病患者から蔓延した病魔に対し、ロブたちの闘いが始まったのです。

この映画を理解するには、中世ヨーロッパの医療事情を知る必要があります。まだ現代医学は一般的ではなく、病んだ人々は呪術的な“治療”を施す理髪師に頼るほかありませんでした。テレビドラマ化されたコミック『JUN─仁─』のように、黎明期の現代医学への尽きせぬ情熱と好奇心は大いに興味をかき立てられます。そして人の体にメスを入れるタブーは黒魔術とみなされ処罰の対象となるというのに、次第に暴走する主人公ロブに、ハラハラドキドキ。

史実に則った歴史物語ではなく、あくまで医学をテーマにおいた冒険活劇として鑑賞するのがおすすめ。大スクリーンで見る砂漠の残酷なまでの美しさや、ペルシアでのエキゾチックなヒロインとの恋をわくわくしながらお楽しみください。