11月5日 京都文化博物館において、『素浪人 月影兵庫』が上映されました。剣の達人の素浪人・月影兵庫と曲がったことが大嫌いな一本独鈷の旅烏・焼津の半次が、気ままな旅を続ける中で、弱きを助け、強きをくじく道中記である。

上映後は、旅烏・焼津の半次役 品川隆二さんとアニメーション監督の大地丙太郎さん、途中参加の映画監督の犬童一心さんによるトークショーが開催されました。

【『素浪人月影兵庫』初期のシリアス調のころ】

品川「では、ご挨拶を…みなさん、こんばんは。品川隆二でございます。私は、この作品を全然覚えておらんのですよ。」
「ごく普通の時代劇でしたね、スタートは。いつからあのようになったんでしょうね。まぁ、せっかくこうやってお会いできたのも月影が結んだご縁でございますから、少しの間お付き合いくださいませ。」
大地「全然覚えておられないんですね(笑)」
品川「ごく当たり前の時代劇で、正直言って面白くもなんともない(笑)」
大地「しかし、途中から路線が変りましたよね」
品川「南条先生がお書きになった原作にほぼ脈絡が繋がっております。雰囲気が。こういっちゃなんだけど、ごく当たり前の時代劇小説だったんですよ。ですから、はじめ映画の先生たちもこういう風にしか撮れなかったんですね」
「私の芝居なんかひとつもないです」
大地「初めて小学校5年生の時に、見たんですけどもうコメディになってました。」
品川「それは『月影』ですか?『花山』ですか?」
大地「『月影』です。大分経ってから、僕の場合はBSで1話を見まして、逆にシリアスだったので、びっくりしました」
品川「50年も前ですからね。私が今年で84歳になるんですけどね。当時は34歳ですよ。若いですよね。」
大地「かなりニヒルな感じはありますけど…」
品川「中途半端ですよね」
大地「(笑)後期に比べれば」
品川「構成の段階でね、この作品にちょっと変化をつける、バリエーションを増やす程度だったんですね。このパターンが何話続いたんでしょうね?このまま続いてたらね、この作品失敗してますよ。」
大地「途中で『月影兵庫 第2シリーズ』があって、コメディ路線に急に変わったんですけど、普通でしたら一旦やめますよね?番組が」
品川「僕らより視聴者の方の要望でしょうね。だって、つまんないもん。原作に沿ってやると何を訴えているのかがね、正直言ってわかんないですよね。だから、勧善懲悪をいろはにほへとでやっちゃったんですね。アフレコだから。」
大地「原作には半次が出てこなかったですよね」
品川「似たような役は出てきますよ」



【コメディ時代劇に】

品川「『月影兵庫』がいろんな事情でストップがかかって、テレビ局も原作者がうんと言わないから困ってたんでしょうね、そこでハタっと『花山大吉』ができたんですよ。『花山』の最初のころの脚本はね、結束信二さんから森田新さん、松村正温さんに代わってから全く変わったんですね。半次は曲がったことが大嫌い。お地蔵さんが曲がってたら直す、看板が曲がってたら直す、そんなところから始まったんですね。世の中は曲がったことが多いですよね。だから、半次はそこに指突っ込んでいって引っ掻きまわすって話が見えたんですね」
大地「半次は動かしやすいキャラだったんですね」
品川「そうですね」
品川「アフレコなんです。全部アフレコ。花山になっても、カラーになってもアフレコです。アフレコは1週間に2本。飲んだ勢いで言ったことが使われたりしてました。」
大地「当時レギュラーが2人だけと聞きましたが」
品川「今が多すぎるんですよ」
大地「そうですよね」
品川「当時(制作費)いくらもらえたと思います?300万ですよ。一時間ものって言うのは少ないものなんですけどね、今は1500〜2000万もらえるんです。だからあの当時は苦しかったんです」
大地「『月影兵庫』って名前がニヒルなんですけど、『花山大吉』って丸っこい感じですよね」
品川「だからね、『月影兵庫』の延長戦と捉えるとおかしいです。別番組なんですよ。作る方はそういう覚悟でやってますね。私がやっててしみじみ感じたのは、こういった喜劇での3枚目は、お客様の目線の下に立たないといけないんですよ。お客様の目線を上に感じて見下ろされながら芝居しないといけないんです。これは、3枚目の鉄則です。サービスをどんどんしないといけない。でも、媚びちゃいけない。媚びるということは人格を変えますからね。サービスをするぶんには泣いたり楽しんだり、怒ったりを遺憾なく発揮して、お客様に許してもらえる程度の謙りでないといけない。そうすると、お客様は無責任に笑ってくれるんです。」
大地「サービスと媚びのボーダーが」
品川「サービスは絶対必要ですよ」



【東映流と大映流】

品川「東映流の松田定次監督は、2、4、6、8、10という偶数がいいと言ってたんですね。スターがいるから。まず、ドーンとフィックスと言って全く動かない画を撮って、次ぎにフルショットでスターの全身を撮り、それからラストを撮る。そうすると、ラストカットで偶数になる。どっちがワンカット多くても偶数になる。だから、偶数がいいんです。」
「大映の演出は、これは、「円はどこまで行っても円」なんです。点にしてはいけないんです。どれだけ細かく削っても円なんです。これが、円の演出です。これは、主役というものはいういかなるシーンでも主役でないといけない。これは長谷川一夫のお言葉なんです。」
「でも、そうしたら、後継のスターが育たなかったんですね。」
「『月影』もある種偶数の演出ですよ。『花山』も。でも、三角形にするんですよ。ゲストはものすごく大事にするんです。」

【アドリブが活きたチームワーク】

品川「当面アフレコがなくなって、シンクロになったんです。それがもう、お互いにアドリブ合戦で」
「大体、頭の半ページくらいは台本通りなんですけど、そこから3〜4ページはアドリブで…監督が丁度いいところでカットをかけるんですよ。カメラマンもよくしたもんで、最初は普通に撮ってたのに、ハンドカメラに切り替えるんです」
「当時はカメラマンの間でズームを駆使するのが流行っていて、この作品にも多く使われてますよ」
犬童「僕、『花山大吉』も『月影兵庫』もすっごいよく見てて、品川さんのやられるコメディタッチがモダンでスピーディーな感じがしました」
品川「それは、僕が現代人出身の役者だからでしょうね。大映撮影所や日本橋で撮影させてもらったんですがね、おそらく無意識のうちに顔を出すんじゃないですかね」