登壇者:シュ・ハオフォン監督 飯星景子さん ミルクマン斉藤さん

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飯星氏と斉藤氏は華やかな衣装でしたが、監督は渋くグレーにまとめてらっします。引き算の美学でしょうか。

この日一番盛り上がったトークで、時間が足りないほどでした。

斉藤「シュ監督が、武術指導もされていますが、斬新なアクション設計でしたね。形意拳(先生のご実家の流派)が元なのでしょうか?」

監督「師匠からは、人前で見せてはいけないと言われました。血が流れることになるから、と」

しかし、少しだけなら良いということで、シュ監督が武術の型を実演してくださいました。

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監督「なぜゆっくり動くかというと、グッと腰を入れるためです」

斉藤「ウォン・カーウェイ監督の『グランドマスター』でも武術指導をされてますが、形意拳以外も指導されましたか?」

監督「他には、八掛拳(チャン・ツィイーが使っていた武術)も指導しました。武術すべてを見ているわけではなくて、顧問です」

飯星「『グランドマスター』では、武術の変化が駆け足で描かれていましたが、
    『ジャッジ・アーチャー』『ソード・アイデンティティ』では、その時、足りなかったものが伝わってきました」

監督「黒澤明監督を例にとりますと、武士が近代化に直面して、変革が迫られているということを描きたかったのです。
    武術の達人が、古い道徳を持ちながら、人とどう対決するのか。鉄砲による死は、単なる個人の死ではなく、伝統の死でもあるのです」

飯星「監督が描くのは、1912年から1953年のみ。なぜ、武術家は短い期間しか活躍しなかったのでしょう?」

監督「一つ目は、清朝では民間で武術が禁止されたこと。二つ目は中華人民共和国が建国されて、
    それまで武術家が解決してきたいざこざを、党(中国共産党)が解決するよう になったことです」

飯星「今でも武術はありますが、スポーツっぽいですね」

飯星「監督の小説は日本語訳になっていないので、原作の小説は読んでいないのですが、
    原作でも、映画と同じように繰り返しのシーンはありますか?」

監督「映画と小説はまるで違います。小説は思想と愛情を重視しています」

斉藤「『ジャッジ・アーチャー』は映画らしい映画。小説の映画化とは思えないです」

監督「私が北京電影学院で学んだのは、ハリウッド的ではなく、詩的な表現。行間や隙間を読ませるものです」

斉藤「シュ監督が影響を受けた人物として、ロベール・ブレッソン監督と溝口健二監督の名前を挙げてらっしゃいますが、
    シュ監督からは、非常に『引き算の美学』を感じます。それが武侠映画とドッキングして、世にも奇妙な味わいになっている」

監督「溝口監督は、大学の頃から注目していました。一番好きなのは『西鶴一代女』です。ロングショットを詩的だと思いました」

監督「『座頭市』が好きで、論文(徐浩峰「《座頭市》的中国心」、『北京電影学院学報』2005年4期。)も書きました。
    今まで、日本では26作品作られていますが、新しい『座頭市』を作りたいほどです」

斉藤「ぜひ作ってください! 香取慎吾で終わらせないで!」

監督「あなたが、スポンサーを呼んできてくれるなら(笑)」

斉藤「『ジャッジ・アーチャー』は人がストップした時のフォルムが変。人体では有り得ない動きをしている。
    何にも似ていない。唯一似てるとしたら、鈴木清順監督です」

監督「私も観ています。比較されて光栄です」

監督「私が描くのは、馬上での、すれ違う時の一瞬の戦いです。
     台湾の映画賞・金馬奨で私がノミネートされないのは、香港映画は常に戦うが、私は一瞬しか戦わないからでしょうね」

<役者について>

監督「ユー・チェンホイさんは74歳です。あの役は最初、数人の候補がいたのですが、まずチェンホイさんに脚本を見てもらったところ、
    まだお願いすると決定していなかったにもかかわらず、台詞を全部覚えてしまったのです。それで感動して、彼に決めました」

監督「主演のソン・ヤンさんは、武術の経験はなかったのですが、踊りの基礎がありました。そこで、タイ山に修行にいかせました」

ボランティアスタッフ 中育穂