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11月9日、「劇場版 忍者部隊月光」上映後、森脇清隆氏(京都文化博物館)と高橋剣氏(東映㈱/京都ヒストリカ国際映画祭プログラム・ディレクター)によるトークが行われました。
高橋氏は忍者装束で登場。衣装は映画村で売ってるそうです。

高橋:今回、ほとんど使われてないフィルムが手に入りまして、綺麗な状態で上映できました。
呆気ない幕切れでしたね。

森脇:ブラック総長が高圧線に触れて、完。

高橋:いま見るとチープな感じが面白かったと思います。
僕はこの映画と同い年です。52年前。兄が原作の漫画を読んでました。

元はフジテレビのシリーズで、劇場版だけ東映が制作してます。
テレビ版はもう映像が残ってないんです。大ヒットしました。

森脇:仮面ライダーっぽさがありますね。

高橋:チャンバラも様になってないでしょう?
これまで、忍者物は京都で時代劇を撮っていた。それが「月光」から変わって、東京撮影の現代劇になったんです。
今回、映画祭で忍者作品を9作品選びましたが、どれもターニングポイントになった作品です。

森脇:科学技術、緻密なんだか適当なんだか分からない感じでしたね。作ってる方は楽しそう。

高橋:後の「パワーレンジャー」につながる流れですね。

森脇:爆破シーンの火薬の量、凄いですね。

高橋:戦隊モノの走りですね。
吹き替えが使えないから、スタントは全部俳優がやってるんです。

森脇:普通の映画とは違う感じの俳優さんが出てますね。

高橋:プロデューサーが、ヤクザ映画で有名な俊藤浩滋さんで。

森脇:忍者の魅力は「チームワーク、コスチューム、アクション」とのことですが、チームワークっていつから出てきたんでしょう?

高橋:日本映画の忍者って一匹狼ですね。身体能力の高いスペシャリストで、暗殺するイメージです。
「月光」からチームワークが出てきたと思います。ナルトもそうですね。

森脇さんは、アニメと無声映画が専門なので、 その辺をお聞きしましょう。

森脇:1921年(大正10年)「豪傑児雷也」尾上松之助さん主演。
この頃は、映画と芝居が覇を競う時代です。
映画は、編集で忍者が現れたり消えたりっていう表現ができますね。芝居にはできないことです。
あと、大ガマ(ガエル)が良いですよね。
この映画は無声で、11日の上映は弁士付きで行います。

高橋:1936年の「児雷也」は大谷日出夫さん。トーキー(音声付き)です。
忍術の変装がトーキーになって声でばれるっていうネタ(月光でもあった)が始まったとかあるんでしょうか?

森脇:戦後すぐに、多羅尾伴内が変装しても声は一緒という演出はしてますけど、忍者では記憶にないですね。

高橋:この頃の忍者物は、講談調で子供向け。キャラクターに深みがないです。

森脇:1962年の「忍びの者」はリアリズムです。
忍者のイメージが変わりました。サスペンス色が強い。歴史的には、忍者はスパイですからね。

高橋:原作は村山知義さん。監督は山本薩夫さん。
プロデューサーの永田雅一さんが、独立プロダクションで仕事していた山本さんを、監督に抜擢しました。
原作は、共産党の新聞に連載してただけあって、組織の中でもてあそばれる悲劇を描いた作品です。

森脇:ダークでエロもある。弱みにつけこまれるという、忍者の人間的な部分が描かれる。

高橋:その後、柴田錬三郎さんなどのリアル系の作品が増えてきた。
「梟の城」(司馬遼太郎)とか、五味康祐さんとか。

森脇:表舞台の裏に、歴史を作っている人が居る。世渡りの世知辛さ描いてます。

高橋:それをひっくり返したのが、山田風太郎さん。
「くノ一忍法」は1964年。R18。
中島貞夫監督。エロの忍法という発想はこれが初めて。その後、いっぱい出きます。

森脇:1982年「伊賀忍法帖」。角川映画のアイドル映画ですが、山田風太郎だけにエロもありです。
「汚れた英雄」が同時上映で、大ヒットしました。

高橋:真田広之さんは「忍びの者」の市川雷蔵 さんとは身体が違いますね。
誰と比べても、真田さんは別格です。
ジャパンアクションクラブが、日本の映画を変えたんです。
松田優作さんもそうですが、顔でする演技ではなく、身体を使ったアクションが売りですね。

人間ができるアクションの限界が真田さん。
一方、VFXでアクションを表現したのが「ニンジャ・アサシン」(2009年)。

森脇:首ちょんぱしたり、ダイナミックなアクションでしたね。

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高橋:日本のVFX忍者作品って、ヒット作がないですよね。「どろろ」くらいですが忍者とは違う。
1982年の「燃えよNINJA」は、イスラ エル人のメナハム・ゴーランが監督。忍者を世界に発信し、大ヒットしました。
ショー・コスギさんも、これで大スターに。これが「ニンジャ・アサシン」につながる。

森脇:「座頭市」ってありますけど、勝新太郎さんは凄い力強さで、限界まで極めている。
北野武監督は、CGで表現し、東京で撮ってる。

何で、京都発の忍者ヒーローって、できないんですかね?
世界や東京では、ヒット作を撮ってるというのに。
海外の忍者って、妖怪か悪魔みたいですよね。

高橋:日本だと精神性が出ちゃうんですよ。
単純なチームワークを描けばいいんですけどね。
でも「ミュータント・タートルズ」は行き過ぎです(笑)

森脇:ハチマキの色、戦隊物からパクってますしね(笑)

高橋:今日、映画村の山口さん(太秦上洛まつり責任者)が来てるんですが、上洛まつりでコスプレしてる人、忍者が多いんですよ。ほとんどナルト。

森脇:小学生相手のイベントで、松之介の「児雷也」の写真見せて「知ってる?」と聞くと、皆「児雷也」って答えられるんですよ。
ナルトの師匠が児雷也だから。

高橋:ナルトの良さを教えて下さい。

森脇:アクション性。忍道をあきらめないということ。
ナルトは、はぐれ者でいじめられっこなんですが、仲間と出会って成長していく。
憎しみの連鎖はどう断ち切ればいいのか? という大きなテーマに、答えを出そうとしています。
エヴァンゲリオンで「人類補完計画」ってありますけど、ナルトの世界でも、それをやろうとしているんですよ。
人類を月から催眠術で操ろうとしている。
こうした大きなテーマは、2時間しかない映画ではできない。シリーズ物の日本のアニメなら表現できます。

高橋:会場には「忍者EX」のアーロン監督もお見えです。
ハワイには忍者マニアが多いんですよね。

森脇:「忍者EX」の忍者は優しい感じです。

ヒストリカ映画祭は、京都府のお金を使って開催してます。
日本や世界の監督に、新しい時代劇を京都で撮ってほしいというのが願いです。

(ヒストリカボランティアリポーター:中 育穂)