nakajima2

11月10日「くノ一忍法」上映後、中島貞夫 監督によるトークが行われました。
聞き手は、高橋剣氏(東映㈱/ヒストリカ映画祭プログラム・ディレクター)です。

高橋:この映画が、監督のデビュー作なんですね。52年前。

監督:そうです。29歳頃でした。

私が東映に入社した頃は、映画全盛期でしたが、5年でテレビに追い抜かれ、映画のお客は半減しました。
そこで、岡田茂プロデューサー(東映京都撮影所長)に「文句ばかり言ってないで、企画を出せ」と言われ、通るわけないだろうと冗談で出したのか「くノ一忍法帖」。

ところが、岡田プロデューサーは、山田風太郎の原作が人気があると分かると「あれをやる。おまえが監督しろ。他にやる奴がいないんだ」と言いだし、監督をやる羽目になりました。

通常は、監督がデビューする時、安い予算で白黒なんです。
けれど「くノ一忍法」はカラーで、予算も多く出してもらいました。

大学の同級生だった倉本聰が、ラジオのライターをやめて、映画の脚本を書き始めた頃で、脚本をやってもらうことになりました。

2作目「くノ一化粧」も倉本とコンビを組んでます。
「くノ一化粧」は、原作全体を原案にして、映画を作りました。山田風太郎さんも「好きにしていいよ」とおっしゃってました。

「くノ一忍法」は、今見ると、忍者映画というよりマザコン映画ですね。
最初はコメディにしようかと思ってたんだけど、結局、自分の好みで重くなってしまったんです。

高橋:千姫が「豊臣VS徳川ではなく、女VS男の戦いなのだ」と言い、子どもを抱いて現れる。
母性は何よりも強い、という結末ですね。

nakajima1

監督:くノ一、3作目はオファーを断りました。
女優さんのヌードを撮る作品は、ストレスが多くて、胃がボロボロになるのです。
その頃は、女優が脱ぐなんて考えられない時代で、話を持っていっても、断られることが多かった。
それでも、応援してくれる人もいました。木暮実千代さんはクランクインの日に、お守り持ってきてくれてね。

週刊誌にも叩かれましたし、撮影所の良識派にも冷ややかな目で見られました。
撮影に関係ない人が覗きにくるので、女優さんの撮影をする時は、ガードマンを雇って見張りをしてもらいました。
親友の萬屋錦之介も、それまでは「一緒に映画を作ろう」と言ってたのに、くノ一をやると言った途端「お前とは絶交だ」と言われました。

高橋:演出がだいぶ抽象的ですね。忍術を描くことも難しいし、裸にも規制があるからでしょう。
くノ一が観音像を見せる→スケベ音楽が流れる→エロ妄想→忍者が井戸の中へ。
という表現は、説明が少なくて、今の人には分かりにくいかもしれないです。

監督:そもそも忍術が、映像化するには無理のあるものばかりなのです。
この頃は、特撮の技術もあまりないですからね。
最後の雪山はセットですが、こういう話を現実的な背景の中では撮れないです。
お腹の子どもを人に移すとか、奇想天外な話ですから。

山田風太郎さんは医学部出身で、原作は、解剖学的な知識があってこその表現ですね。
発想の面白い人で、お風呂に入っていて「クルクルっと回してアレが取れたら面白いのに」って思ったそうです。

高橋:忍者は、身体を使って何でもできる天才ですから、エロとグロに行きやすいんですね。
くノ一のお腹がアップになって、次のカットで、忍者とくノ一が血の池で死んでるシーン。
あれは、どういう術なんですか?

監督:忍者が、お腹に吸い込まれたという表現です。

高橋:忍者のお約束で、技の名前をいちいち言いますね。「忍法 露涸らし」とか。

監督:本当は「筒涸らし」なんだけど、映倫に変えてと言われて「露涸らし」になったんです。そっちの方が下品だよね(笑)

高橋:幸村と佐助が、幽霊になって、くノ一達を見守っているという設定。あれは何のために?

監督:解説役ですね。
それと、俯瞰の画を多用して、物語絵巻っぽくしたかったのですが、中途半端になりました。
障子の穴から覗いてるみたいな画がありますが、あれを「物語絵巻調にして欲しい」ということを、美術スタッフに上手く伝えられませんでした。

当時、忍者ものは多かったです。
特撮は時間がかかるんです。画面を2面割するのでも大変。助監督時代、徹夜続きで時間外300時間くらい働いてました。
リアル系、子ども向けと色々出た中で、くノ一が出てきた感じですね。

高橋:よく、デビュー作は、作家のエッセンスが全てつまっているといいますね。

監督:私はエロ忍法でデビューしてしまったので、苦労しました。
その後、シリアスな現代劇を撮れるようになるまで、どれだけ企画書を提出したことか。

高橋:新作の話をお願いします。

監督:「時代劇は死なず ちゃんばら美学考」というドキュメンタリー映画が公開予定です。
京都のちゃんばら映画の歴史を、考察した作品です。
ちゃんばらは、日本を象徴する芸術であると思っています。
京都国際映画祭では上映済みで、桂川のイオンモールでも12月3日から上映します。

(ヒストリカボランティアリポーター:中 育穂)