2013.12.07
ヒストリカ・トーク「『ピー・マーク』ティーチイン」@京都文化博物館
12月7日「ピー・マーク」上映後、バンジョン・ピサンタナクーン監督による「ピー・マーク ティーチイン」が京都文化博物館で行われました。

司会者は、東京フィルメックス プログラム・ディレクター、市山尚三さん、通訳は高杉美和さんです。
高杉さんは、映画の字幕もされています。
市山「この映画は、タイでは有名な『メー・ナーク』という怪談が元になってるんですよね」
監督「今まで、30回以上映像化されていると思います。15年前に映画化された『ナンナーク』は大ヒットしました。
従来の作品はホラーでしたが、『ピー・マーク』はコミカルです。
同じようなものは作りたくありませんでした。今までマークは色黒でしたが、今回はハーフにしました。話し方も現代的です。
タイでは16バーツ(30億円)の大ヒットになり、歴代興行収入1位になりました。
ユーモアがあったこと、エンディングがヒットの要因ではないかと思います」
この後は、お客さんから監督へ、次々質問がありました。

Q「映画はコメディですが、監督の真面目な部分も映画に反映されてますか?」
A「演出やアートディレクションは真剣に行っています。最後のロマンチックな部分に表れていると思います」
Q「佐賀の出身です。最近『ナンナーク』のノンスィー監督が佐賀で撮影をされていました(*)。
15年前の『ナンナーク』は、今回意識しましたか?」
(* 来年2月タイで公開予定だそうです)
A「『ナンナーク』は古典的で素晴らしい作品ですが、私は違うものにしようと思っていましたので、気負っていません」
Q「ヒロインの女優さんについて教えてください」
A「タイとベルギーのハーフで、TVドラマやCMやモデルなどで活躍されています。
目力で、切なさや怖さを表現できる人を求めていたので、彼女に決めました」
Q「主演の俳優さんについて教えてください」
A「マリオはアジア全域で有名なスターです。この役もオーディションで選んだのですが、
CMで一緒に仕事をしたことがあるので、彼なら大丈夫だろうと思いました」
Q「親友役の髪飾りの人は、コメディアンですか?」
A「いいえ。彼は俳優です。親友4人は、私の前作である、50分の短編映画にも出ています」
Q「皆、お歯黒をしていましたね?」
A「あれは100年から200年前の習慣です。ビンロウの実を使ってます。昔は歯が黒い方が、イケメンで美人だったのです。
俳優たちには、映画公開後、歯磨き粉のCMのオファーが来ました」
Q「お歯黒という昔の習慣と、遊園地という現代の乗り物が出てきましたが、意図的に時代を混ぜていますか?」
A「大胆なものを作ってみたかったのです。最初、マークが弱虫というのは、若者にしか受けないと思っていたら、老若男女に受けました」
Q「日本映画はご覧になりますか?」
A「好きです。『そして父になる』を見て、かなり泣きました」
Q「幽霊が襲ってこないで見てるだけというのは、日本に近いですね」
A「タイでも、一般的な幽霊は襲います。でも、ナークは夫と居たいだけなので、襲わないのです」
Q「お化け屋敷で出てきたお化けたちは、タイでは一般的なんですか?」
A「地元のお化けです。タイには、傘のお化けや、頭と内蔵だけのお化けがいます。
子どもがお金持って跳ねてるのは、日本で言う、河童みたいなものです」
Q「マークが、幽霊と知っていてナークを愛し続けたのは、監督オリジナルですか?」
A「そうです。それが成功の秘訣かな」
Q「お坊さんが主人公たちを見捨てて逃げていましたが、ああいうことを描いて、よろしいのでしょうか?」
A「私は普通の、身近なお坊さんを描きたかったのです。馬鹿にしているわけではないので、大丈夫でしょう」
Q「名前で呼び合うシーンが印象的ですが、『ピー・マーク』の『ピー』って何でしょう?」
A「年上への敬称です。お兄さん、というような意味です」
Q「誰が幽霊なのか混乱するシーンがありましたが、タイでは皆知ってるのですよね? あえて、そのネタをやる意味というのは何でしょうか?」
A「前の作品でのコンセプトがそれで、これを『ピー・マーク』で使うと現代的で面白いんじゃないかと思い、取り入れました」
Q「親友たちが虫ご飯にウッとなるシーンがありましたが、タイでは虫を食べることは普通ですよね?」
A「唐揚げにして食べますが、生で動いてるのは無理です。茶色いイモムシは食べませんが、
白いイモムシは食べます。特急列車という虫は美味しいですよ」
Q「従来の『メーナーク』というタイトルだと彼女の物語だと思いますが、
今回『ピー・マーク』にしたのは、彼の視点に観客を連れて行くためでしょうか?」
A「その通りです。マークの気持ちをたくさん入れて、新しい解釈をしています」
市山「マカオの『アジア太平洋映画祭』で、『ピー・マーク』は美術賞にノミネートされてます。
ウォン・カーウェイ監督『グランドマスター』と賞を競うのですが、是非、賞をとって欲しいですね」